髙橋 久英

多発性嚢胞腎症D2-pcyマウスに1.0%NH4Cl- 20%しょ糖液を8週齢から1週間摂取させると,飼料摂取量は増加したが,体重,摂水量,尿量は低下し,腎重量は対照レベルを下回る傾向を示した.腎の組織変化の程度ならびに尿素窒素の血中濃度は対照と同レベルであった.尿中アンモニア窒素は著しく増加し,尿pHは対照レベルより更に低下したが,滴定酸及び無機リンの尿中排泄に変化はみられずNH4Cl摂取の嚢胞形成に及ぼす有意な影響は認めなかった

多発性嚢胞腎症マウスに細胞分裂抑制薬タキソールを週1回腹腔内注射して腎の機能,形態に及ぼす影響を検討した. 1)生後12日目の動物は初回投与150μgで半数が死亡したが,100μgでは体重の増加抑制,脱毛がみられたもののこの投与量に耐え,11週間の投与期間中,多尿及び尿pHの低下が抑制され,嚢胞の拡張遅延がみられた.投与終了後の血清尿素窒素,尿量及び尿中クレアチンに有意差は認められなかった. 2)生後21日目から150μgを9週間投与したが,DMSO投与群と殆ど相異がなく,タキソール投与群の検査では,血清尿素窒素の有意低下がみられたが,腎嚢胞の拡張進展に影響はみられなかった

1)細胞増殖抑制剤パクリタキセルの構造類似物質であるドセタキセルを,多発性嚢胞腎症(PKD)の進行が比較的緩やかであるpcyマウスに投与したが,PKDの進行を抑制することはできなかった. 2)パクリタキセルと抗ファイブロジェニック効果を有する抗炎症薬メチルプレドニゾロンをpcyマウスに併用投与したところ,高死亡率と低体重と共に,顕著なPKD進行の抑制が認められた. 3)嚢胞発生関連因子に基づいた投薬実験は,嚢胞発生機序の解析に寄与すると考える