研究者氏名 斎藤 芳隆
サイトウ ヨシタカ URL 所属 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 部署 宇宙科学研究所 学際科学研究系 職名 准教授 学位 博士(理学)(東京大学), 理学(修士)(東京大学) J-Global ID 200901068528199528
プロフィール 科学観測用気球の開発とそれを用いた科学観測を行っています。気球には到達できる高さ、飛翔時間の制限がありますが、それを大きく打ち破る気球が誕生しつつあります。気球の研究を進め、気球の可能性を広げ、様々な科学観測実験で利用できるようにしたいと考えています。 修士過程では、所属する研究室で開発が進められていた天体硬X線検出器を用いた気球実験に携わりました。博士過程ではそれを将来のX線天文衛星搭載用に発展させると共に、X線天文衛星「あすか」による回転駆動型パルサーの観測を行い、エネルギー放射機構の研究を進めました。 その後、宇宙研気球グループに奉職し、高エネルギー宇宙物理に関する観測実験を継続すると共に、気球本体、搭載機器、地上系といった気球実験システム全般の開発と運用に従事するようになりました。気球の飛翔実験実施にあたっては受信班として、気球と地上間のデータ伝送の確立を担っています。 気球本体の開発として最初に手掛けたのは、薄い皮膜を開発し、それを用いた気球を開発することで、飛翔高度を向上させる研究でした。3.4 um厚のフィルムを開発し、2002年にはそのフィルムを用いた気球により30年ぶりに世界最高気球高度記録を更新しています。さらにより薄いフィルムの開発を進め、2013年には2.8 um厚のフィルムにより、再度の記録更新に成功しました。 この研究と並行して進めているのがスーパープレッシャー気球の開発です。これは、気球を密閉して加圧することで、夜間の浮力の低下を防ぎ、長時間の飛翔を可能にする気球です。2000年代は気球皮膜自体の開発や、ロープと皮膜を組み合わせることで構造強度を向上させたLobed-pumpkin型やその展開性能を改善した俵型の気球の開発を進めました。2010年には皮膜に菱形の目の網をかぶせることで軽い構造で高い耐圧性能が得られることを見出し、以後、この型の気球の開発を進めております。スーパープレッシャー気球の実現には、軽い構造で十分な耐圧性能と気密性能を持たせることが大切です。2019年には体積6,400 m3の気球の地上試験(地上試験としては世界最大級です)を実施し、十分な安全率をもって、高度27 kmに70 kgのペイロードを長時間飛翔させることができる耐圧性能を有することを確認しました。2020年には体積2,000 m3の気球の飛翔試験を実施したのですが、放球直後からガス漏れが発生するという不具合が発生しました。放球時に網が叩いたことで皮膜が衝撃破壊を起こしたもので、これを防ぐべく、2020~2023年にかけて、準静的に気球を立ち上げて放球する新しい方法を開発し、その実証試験まで完了しました。2024年には、この放球方法により、再度、体積2,000 m3の気球の飛翔試験を実施する計画です。また、皮膜を多層化することで10日以上の飛翔が可能となる気密性能が得られること、耐圧性能は3,000 Paを超えることを体積180 m3の小型気球の地上試験で実証しました。2022年には、この型の気球を用いて、南極域での大気重力波観測が実施され、2024年には改良を加えた気球での実験を計画しています。 このように、気球の研究は進んでいるのですが、一方で、気球を用いた科学観測実験の方は開店休業状態であり、これが実施できていないことには忸怩たる思いがあります。残念ながら、現状の我が国の気球実験システムでは、気球の飛翔期間が数10時間に限られてしまうため、得られる光子数が乏しく、実施したい高エネルギー天体の研究が困難なのです。むろん、この制限の元で科学的な成果をあげることも不可能ではありませんが、自分が我が国で唯一、大気球の飛翔機会を提供している研究所に所属し、我々以外に気球の研究を進めているグループが存在しない現状を考えると、気球を用いた実験を実施するよりも、気球の研究を推進し、自らの実験を可能にすると共に、みなさまに利用していただける気球が提供できるようにすることこそが責務、と感じております。 長時間飛翔が可能な気球は世界的にも黎明期にあり、我が国ではその技術は未獲得です。大型気球は開発コストが嵩むため、小型気球からの開発となるのですが、技術的には小型の方が困難です。これは、気球重量が表面積に比例しているのに対し、浮力は体積に比例することが一因で、もう一つには気球皮膜の欠陥数は表面積に比例するのに対し、ガス漏れの許容量は気球体積に比例するためです。上にも記載しましたが、我々は耐圧性能、気密性能、それぞれの向上手段を見出しており、これらを用いて科学観測に利用できる気球を開発し、小型気球による科学観測を開始したいと考えています。
研究キーワード
中性子星
,X線天文観測
,高高度気球
,スーパープレッシャー気球
,高エネルギー宇宙物理学
,High Energy Astrophysics
,大気球実験
経歴
2012年2月
-
現在
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 学際科学研究系 准教授
2010年4月
-
2012年1月
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 大気球研究系 准教授
2008年4月
-
2010年3月
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 大気球研究系 准教授
2007年10月
-
2008年3月
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 大気球観測センター 准教授
2003年10月
-
2007年9月
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部 大気球観測センター 助教授
学歴
1992年4月
-
1997年3月
東京大学 大学院理学系研究科 物理学専攻
1990年4月
-
1992年3月
東京大学 理学部 物理学科
論文
Journal of Evolving Space Activities 1(14) 2023年3月 [査読有り]
斎藤 芳隆   冨川 喜弘   村田 功   秋田 大輔   中篠 恭一   松尾 卓摩   橋本 紘幸   松嶋 清穂   
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 JAXA-RR-22-008 25-35 2023年2月 [査読有り]
Kyoichi Nakashino   Yoshitaka Saito   Daisuke Akita   Takuma Matsuo   
Advances in Space Research 71(1) 705-719 2023年1月 [査読有り]
斎藤 芳隆   山田 和彦   秋田 大輔   中篠 恭一   松尾 卓摩   山田 昇   松嶋 清穂   
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 大気球研究報告 JAXA-RR-21(003) 1-34 2022年 [査読有り]
SAITO Yoshitaka   NAKASHINO Kyoichi   AKITA Daisuke   MATSUO Takuma   
TRANSACTIONS OF THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES, AEROSPACE TECHNOLOGY JAPAN 19(2) 170-175 2021年3月 [査読有り]
<p>A super-pressure balloon with a diamond shaped net is considered to be a vehicle which satisfies scientist requirements of a long duration balloon flight at high altitude. The development of the balloon was started in 2011, and ground inflation...
MISC
斎藤 芳隆   
ISASニュース 492 5-5 2022年3月
斎藤 芳隆   
ISASニュース 396 8-10 2014年
斎藤 芳隆   
ISASメールマガジン 473 2013年
斎藤 芳隆   
天文月報 96(9) 500-504 2003年8月
斎藤 芳隆   
ISASニュース 238 12-12 2000年1月
講演・口頭発表等
斎藤 芳隆   水村 好貴   山田 和彦   秋田 大輔   石村 康生   加保 貴奈   藤原 正智   中篠 恭一   古田 竜也   松尾 卓摩   山田 昇   五十嵐 優   橋本 紘幸   松嶋 清穂   
2022年度大気球シンポジウム
斎藤 芳隆   冨川 喜弘   村田 功   秋田 大輔   中篠 恭一   松尾 卓摩   松嶋 清穂   橋本 紘幸   
第22回宇宙科学シンポジウム
斎藤 芳隆・山田 和彦・中篠 恭一・秋田 大輔・松尾 卓摩・石村 康生・山田 昇・加保 貴奈   
2021年度大気球シンポジウム
斎藤 芳隆   冨川 喜弘   村田 功   加保 貴奈   菅野 高司   
電気情報通信学会 衛星通信研究会
Yoshitaka Saito   Daisuke Akita   Fuyumi Izumi   Kyoichi Nakashino   Takuma Matsuo   Kiyoho Matsushima   Hiroyuki Hashimoto   Shigeyuki Shimadu   
43rd COSPAR Scientific Assembly 2020
● 自由記述
ひとこと
昼休みにも熱心に超小型スーパープレッシャー気球の飛翔制御の研究を行っています(ソフトテニスともいう)。いかに気球に上手に網(ネットではなく、ガット)をかぶせるが重要です。
● 指導学生等の数
年度
2018年度(FY2018)
博士課程学生数
0
修士課程学生数
0
連携大学院制度による学生数
0
受託指導学生数
0
技術習得生の数
0
インターンの人数
0
学術特別研究員数
0
その他
0
年度
2019年度(FY2019)
博士課程学生数
0
修士課程学生数
1
連携大学院制度による学生数
1
受託指導学生数
0
技術習得生の数
0
インターンの人数
0
学術特別研究員数
0
その他
0
年度
2020年度(FY2020)
博士課程学生数
0
修士課程学生数
0
連携大学院制度による学生数
0
受託指導学生数
0
技術習得生の数
0
インターンの人数
0
学術特別研究員数
0
年度
2021年度(FY2021)
博士課程学生数
0
修士課程学生数
1
連携大学院制度による学生数
1
受託指導学生数
0
技術習得生の数
0
インターンの人数
0
学術特別研究員数
0
その他
0