主人公ヒースクリフの悪魔的な行動とも言える行動に説明をつけるために、石川 准著、『アイデンティティ・ゲーム』を参考にし、「存在証明」という言葉をカギにヒースクリフの行動を辿っていく。同時にLawrence Stone, "The Family, Sex and Marriage in England 1500-1800"も引用し、当時の社会的状況も考慮に入れながら、キャサリンの結婚の選択の正当性をも論じ、その結果がもたらしたヒースクリフの悪魔的行動の理由と彼の復讐の対象を明らかにする。
『嵐が丘』全体の構造とその世界を明らかにするために論じた修士論文である。作品の中で繰り返される”heaven”と ”paradise”の隠喩の意味、家政婦エレン・ディーンのナレーターとしての役割、そして19世紀のイギリスと作品の舞台背景を論じる。またキャサリンとヒースクリフが共有する世界と二人の関係をE・ブロンテの詩、”I see around tombstones grey”,”No coward soul is mine”,”The Old Stoic”等を引用しながら探っていく。その...