三善 陽子

症例は25歳女性で、高身長、発達遅延を主訴とした。乳幼児検診で異常は指摘されなかったが、小学校入学後に発達遅延を指摘され、高身長とMarfan様体型を認めたため、10歳7ヵ月時に精査目的で入院した。身体所見では身長166.4cm(+3.77SD)、Marfan様体型、特徴的な顔貌(丸顔、太く水平な眉、狭い眼裂)と腰椎前彎を呈したが、大動脈基部病変や眼科的所見は認めなかった。また、軽度から中等度の知的障害とてんかんを認め、尿中アミノ酸分析でシスチン・オルニチン・リジンが高値を呈したが、ホモシスチン尿症は否定的であり、高身長の原因疾患は特定できなかった。後に遺伝子検査でDNAメチルトランスフェラーゼ3A遺伝子にde novo変異を検出し、臨床所見と合致していることからTatton-Brown Rahman症候群と診断した。

癌患者に対しては原疾患の治療を優先すべきであるが、同時に癌克服後のQOL向上を見据えた治療戦略を立てることも重要である。特に小児期・若年期の癌においては、思春期に性的に成熟し妊孕性を獲得し、成人後に結婚や妊娠・出産などを経験するので、治療に当っては晩期合併症のリスクを念頭におき、長期フォローアップが重要となる。小児・若年癌患者の、1)晩期合併症、2)性腺機能障害、3)妊孕性温存、4)大阪大学病院小児科における検討、5)海外における取り組み、6)生殖医療ネットワークとしての取り組み、について概説した。

関連2施設で1990〜2012年にB型肝炎母子感染予防処置を行い成功した105例を対象とし、「HBワクチンに対する初期反応」「追加ワクチン接種頻度」「不顕性HBV感染の発生頻度」などについて検討した。HBワクチンに対する初期反応は3回接種後のピークHBs抗体価によって3群に分け、300mIU/ml未満を"低反応群"、300以上1000mIU/ml未満を"中反応群"、1000mIU/ml以上を"高反応群"とした。低反応群は47例(45%)、中反応群は31例(30%)、高反応群は27例(26%)であった。追加ワクチン接種が行われた症例の割合を3群間で比較すると、低反応群60%、中反応群26%、高反応群15%であり、低反応群は他の2群に比べて有意に高かった。不顕性HBV感染は低反応群の4例(9%)、中反応群の1例(3%)で発生し、高反応群では発生しなかった。不顕性HBV感染の発生率は全症例の4%であったが、母のHBe抗原陽性例に限ると25例中4例(16%)を占めていた。