斉藤 和広, 緑川 博子, 甲斐 宗徳
情報処理学会研究報告. [ハイパフォーマンスコンピューティング] 2010年6月10日
筆者らはクラスタにおける遠隔マシン上のメモリを利用して大容量メモリを提供する遠隔メモリページングシステムが,OS とは独立のユーザレベルソフトウェアとして実装することで高速かつ安定した動作が得られることを示してきた.遠隔メモリを利用する上で,遠隔スワップは最もクリティカルな処理であるため,OS の仮想メモリと同様に効率のよいページ置換アルゴリズムが求められる.しかし,ユーザレベルソフトウェアでは従来の OS で利用されてきたメモリアクセス情報を利用するページ置換アルゴリズムをそのまま用いることが難しい.擬似的なメモリアクセス情報を用いることで実装可能ではあるが,このコストや性能は十分に評価されていない.そこで今回,擬似的なメモリアクセス情報ビットとして参照ビットと変更ビットをユーザレベルで実装,評価を行い,実用可能であることを示した.更に,これを利用したユーザレベル実装のページ置換アルゴリズムとして Clock,NRU,擬似 LRU と,メモリアクセス情報を利用しない低コストのシンプルアルゴリズム,スワップイン履歴を用いたページ置換アルゴリズム,ランダムアルゴリズム,FIFO を実装し,比較・評価を行った.