豊田 正博
農業および園芸 88(2) 299-307 2013年2月 招待有り筆頭著者
園芸療法は,1990年代,アメリカで園芸療法を学んだ日本人が,アメリカの園芸療法を紹介し,実践をはじめた際に,当時のバブル経済崩壊後の心の癒しを求める価値観の拡大とガーデニングブームを背景にマスコミが注目したことで市民の関心が高まった(豊田1998)。その後,園芸療法の普及をめざす団体,教育機関が設立され,今日では国内で園芸療法を学んだ実践者が活躍し始めている。園芸療法が紹介され,団体や教育機関が設立された当時を園芸療法導入期とするならば,約20年を経過した現在は定着期にある。しかし,実践者が育っているといっても,日本で園芸療法が広く安定的に定着しているとはまだ言えない。定着期に求められることは,'園芸療法'に魅力を感じ期待を寄せる'関心層'の増加,続いて,園芸療法の概略がわかり,園芸療法土をめざしたり,ボランティアとして,あるいは職場の同僚や上司・経営者として応援してくれる'理解者'の増加,最後に園芸療法をしっかり学び園芸療法の臨床,研究,教育を担う'実践者'の増加が必要である(図1)。