小林 飛鳥, 大沼 学, 横山 真弓, 鈴木 正嗣, 宇野 裕之, 大泰司 紀之
The journal of veterinary medical science 66(12) 1535-1542 2004年12月25日 査読有り
エゾシカ(Cervus nippon yesoensis Heude, 1884)の胎子127頭を個体群の栄養状態によりグループ別けし,成長評価,胎齢推定を行った.骨化中心の出現順序と時期を明らかにし,骨長,骨化中心出現を基準として胎動推定を行い,さらに個体群間の胎子成長を比較し,栄養状態の悪化が胎子成長にもたらす影響について考察した.胎齢推定の基準として,高質個体群の胎子において,出生直前の胎子の大腿骨骨幹長から推定した胎齢と骨点数との関係式を算出した.出生直前の胎子サンプルが含まれない他のグループでは,大腿骨骨幹長による胎齢推定ができないため,この骨点数胎齢式を用いて胎齢推定を行った.大腿骨骨幹長を個体群間で比較すると,その差は極めて小さく,栄養状態による影響は小さいことが確認された.しかし,胞子体重は栄養状態の悪化に伴い大きく減少し,また受胎日の遅れも見られた.野生下において正確な胎齢を知ることは不可能であるが,骨長,骨化中心の出現を用いた本研究の方法により,より正確な胎齢推定の基準を作ることができた.体重による胎齢推定は誤差が大きいのに対して,骨の指標による胎齢推定法は誤差が小さく,他のシカ個体群にも適用可能である.骨長,骨化中心の出現のどちらとも,胎齢未知の胞子から得ることができる情報の中で,胎齢推定における信頼性の高い指標であることが示唆された.