研究者業績

三谷 雅純

ミタニ マサズミ  (Masazumi MITANI)

基本情報

所属
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 客員教授
学位
理学博士(1988年11月 京都大学)

連絡先
masazumimitanigmail.com
研究者番号
20202343
J-GLOBAL ID
200901033530426355
researchmap会員ID
1000224238

人やヒトの社会や行動の本質を科学的に探る、霊長類学、人間行動進化学に強い興味を持って研究者を続けています。アフリカ中央部(カメルーン、コンゴ共和国)を中心に、鹿児島県屋久島、インドネシア(ジャワ島、スマトラ島、カリマンタン島など)の熱帯林で調査・研究をしてきたフィールド・ワーカーです。

2002年4月に脳塞栓症に陥り、以来、右の半身麻痺と失語があります。自由に森には行けなくなりましたが、代わりに人やヒトの多様性に興味を持って研究を続けています。生涯学習施設の講演や緊急災害情報などの公共放送はどうあれば聴覚失認のある高次脳機能障害者、聴覚情報処理障害者が理解できるのかを、視聴覚実験によって確かめています。

これからは、さまざまな文化的、遺伝的多様性を持った人の作る社会のあり方を研究していきたいと考えています。


論文

 44
  • 三谷雅純
    障害理解研究 J25 17-31 2025年2月  査読有り責任著者
    失語症などの高次脳機能障害は、脳血管障害や頭部外傷によって発症することがある。まれに、失語症に加え、聴覚失認も併発すると、音声で話すことができず、聞いたことを理解できないという二重の障害を抱えることになる。この二重障害を持つ女性の生活世界を記述し、医療人類学的観点から論じる。調査は、2023年6月から2024年1月にかけて行われた4回の半構造化インタビューからなり、約9時間にわたってICレコーダーで録音された。インタビュー対象者が失語症であり、聴覚失認を呈していることを考慮し、女性の負担をできるだけ少なくするために、音声文字変換装置、電子メモパッド、紙のA4ノートを用いてインタビューを行った。録音は逐語的に行われ、誤った発言や事実誤認がないかを確認するために、女性本人が確認した。聞き取り調査の結果、失語症や聴覚失認の症状を十分に理解していないために、医師や言語聴覚士、あるいは一般の人々から差別を受けていることが明らかになった。地域コミュニティや市民団体は国や県のルールに縛られないため、女性の参加によって市民団体内での扱いが包摂的になる可能性がある。女性は障害を気にすることなく、ICTやその他の補助手段を積極的に使って社会に参加しようとしている。今後、女性と市民団体の相互包摂も可能だと思われる。
  • 三谷雅純
    人と自然 33 93-110 2023年3月10日  査読有り責任著者
    聴覚失認者を対象に,ワークショップ「聴覚失認者に理解しやすい放送方法とはどのようなものなのか」を開いた.当事者26 名,援助者や言語聴覚士26 名が参加した.それ以外にオブザーバーとして放送局のCSR 責任者らが参加した.参加者の生活する世界は非障害者とは異なる可能性があるが,検証の結果,障害の重い当事者の回答を参考意見とし,それ以外は,軽度の聴覚失認者も含めて有効な意見と認められた.ワークショップでは三谷の研究から(1) 肉声の利用,(2) 多感覚統合の利用,(3) チャイムの添付,(4) 男女のアナウンサーで同じことを繰り返すという基準が導かれた.この基準に従って試作した災害放送を聞いてもらうと,非障害者は「男女同じことを言うのが良い」を選んだが,聴覚失認者に有意な回答の差は認められなかった.また実際の災害場面の動画に付ける字幕で非障害者は「発言をすべて文字に起こし,大事なところだけを黄色でハイライトした字幕」が理解しやすいとしたが,聴覚失認者に有意性は検出できなかった.ワークショップの最後に,障害当事者,援助者,言語聴覚士と放送局の担当者(CSR,字幕,映像技術)で字幕放送の可能性について議論した.
  • 三谷雅純
    福祉のまちづくり研究 24(Paper) 25-35 2022年8月31日  査読有り責任著者
    注意喚起のため、チャイムのある場合とない場合で聴覚失認者の反応に違いがあるのだろうか。そのことを確かめるために、「小説の朗読」で新しく作った言語音課題と「視覚刺激と一桁の暗算」の視聴覚実験をチャイムのないことを除いては三谷(2019, 2021)と同じ条件で行った。結果を以前に実施したチャイムのある場合の結果と比べると、チャイムの有無で非障害者と中・重度障害者に有意な差が認められた。チャイムのある非障害者の最低スコアー以上であれば内容を理解できると仮定すると、チャイムがない言語音では軽度障害者と中・重度障害者のおよそ25%が理解できた。さらにチャイムがあれば軽度障害者の50%以上、中・重度障害者の25%以上が理解できた。チャイムがあることによってより多くの聴覚失認者が言語的意味を理解できることが確認できた。
  • 三谷雅純
    福祉のまちづくり研究 22(Paper) 1-11 2021年2月1日  査読有り責任著者
    緊急災害情報は、注意喚起のためのチャイムに続いて言語音で読み上げる災害情報を正確に受け取ることで成り立つ。その時、言語音の認知が困難な聴覚失認者は災害情報を把握できるのだろうか。この疑問に答えるために、聴覚失認のある障害者のべ74名、聴覚失認の自覚のない非障害者のべ42名に対してマルチメディアDAISY形式で作成した言語音課題に答えてもらう視聴覚実験を行った。結果は被験者が言語音の理解が困難であるにも関わらず実験前半は正しい回答が得られた。しかし後半は間違いが目立った。多感覚統合を活用すれば聴覚失認者は通常の言語音でも情報を把握することが可能だが、時間の経過と共に言語音の把握は難しくなる。

MISC

 117
  • 三谷雅純
    倉田奨励金研究報告書 第 54 集 2023 年度(第 55 回)助成 2025年10月  査読有り招待有り責任著者
    高次脳機能障害の残る失語症者の内、聴覚失認者と「聞き取りが不自由な失語症者」をモデルにそれぞれの生き方を探る。社会に出て行こうとする聴覚失認者は目に見えない「障害者への差別」を受けていた。「聞き取りが不自由な失語症者」は失語症友の会に参加し言語リハビリテーションなどを行っていたが、人権の主張や就労支援活動は行っていなかった。このことは未だ彼らが日本社会に包摂されていないことを示す。包摂されるかどうかは「働ける」か「働けない」かによるところが大きい。この矛盾を解消することが先決である。
  • 三谷雅純
    福祉のまちづくり研究 26(2) 83-84 2024年12月  招待有り責任著者
    人類学者であるわたしは、自分とは異なる人生観や死生観をもった他者の参与観察をすることでその考え方に触れ、その差異の意味を探ることが自分の役割だと心得ている。それは「均質な(架空の)社会」を前提に作った計画では抜け落ちる人びとを、いかに救い挙げるかという自らの役目を自覚してのことである。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2023年4月19日  招待有り責任著者
    関東大震災は1923(大正12)年9月1日に起こっていますから、2023年はちょうど100年目に当たります。節目の年ということで、今年は防災、中でも今まであまり語られてこなかった障害者と防災の話題が増えるのではないでしょうか。関東では首都直下型地震が懸念されています。西日本の広い地域では南海トラフ地震が懸念されています。それだけに「大震災」という言葉にナーバスになるのです。このように過去の震災がことさら喧伝されるのは、人びとの間に恐怖がひたひたと迫っている実感があるからではないでしょうか。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2023年4月3日  招待有り責任著者
    精神科病院の病床数はわずかに減ったもののほとんど変わっておらず、現在でも30万床以上あります。入院期間も世界に類を見ないほどの長期入院で、1年以上入院していた人が20万人以上もいるのです。そのうえ、受け入れる住民の側にも精神障害者が近くに来るのは嫌だという思いがあります。病院は患者を出さず、地域は精神障害者を拒否するでは、障害者としては立 つ瀬がありません。このような日本の現実と対比して語られるのがイタリアの精神医療システムです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2023年3月20日  招待有り責任著者
    ■人類学者として見た障害者の世界 わたしの発症は2002年4月でしたから、もう20年以上も前のことになります。その間わたしの生活している世界は、時には急激に、時にはゆっくりと変化しました。わたしの身体とこころの変化が大きかったのですが、わたしの変化に応じて周りも変化してきたのです。 発症直後の数年間は、劇的な変化がありました。それを「不幸なこと」と一口では言えないのですが、今から振り返ると、まるでジェットコースターに乗ったような経験だったのです。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2023年3月7日  招待有り責任著者
    東京・八王子市にある精神科病院「滝山病院」で、看護師が入院患者への暴行の疑いで逮捕されました。患者を支援している弁護士が記者会見を開き「院内で記録された映像や音声などを分析したところ、少なくとも10人以上の職員が暴行や暴言などの虐待行為をおこなった可能性がある」と指摘しました。「病院全体で日常的に虐待行為がおこなわれていた可能性がある」ということです。ただ、これは数ある精神科病院の実態があらわになっただけで、日本にはまだまだ同じような病院がたくさんあるに違いありません。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2023年2月21日  招待有り責任著者
    ■助け・助けられる障害者 高齢者や障害者は行政機関から被援助者としてリスト・アップされ、災害時には非障害者から助けられる。それが当然だと思っている人は、障害者に、そして非障害者にも多くいると思います。ですが、一分一秒を争う避難のときに、自分だけでなく障害者まで助けられる余裕のある人は多くないような気がします。 一方で、一口に障害者といってもさまざまです。知的障害のある力の強い人なら車いすを押すことなど造作もないでしょう。また片マヒがあっても、地域の人のために、あらかじめ地図上で避難経路を考えておくことが得意な人もいるでしょう。 防災と障害者の役割は、助ける人/助けられる人などと固定的に考えるべきではありません。柔軟にとらえるべきです。 第20回の「地域で暮らす」の中で、わたしたち障害者は何も特別な存在ではなく、地域で生活する普通の人間なのだと書きました。今回は障害特性を積極的に活かして、障害者が地域住民と共に防災活動に奮闘(ふんとう)している姿を紹介します。それは北海道の浦河町にある「べてるの家」の取り組みです。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2023年1月27日  招待有り責任著者
    2 0 2 3 年1 月 1 1 日付けの記事「文部科学相はなぜ国連勧告を受け入れなかったのか」で、国際連合( 以下、国連)から日本政府に、現状の障害児への特別支援教育は「障害児の分離政策」につながるからやめるようにと勧告が出たことを伝えました。日本政府は障害者権利条約を批准していたのですが、それでも勧告は受け入れないと回答しました。わたしのこの論には、さまざまな立場から多くのコメントをいただきました。コメントをいただいたこと自体は大変ありがたかったのですが、中には首 をひねらざるを得ないようなコメントもありました。今回はまず、わたしに可能な範囲ですが、わたしも知らなかった国連の障害者権利委員会の仕組みも含めて、コメントの誤解を解いてみようと思います。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2023年1月19日  招待有り責任著者
    ■ALS患者と声の役割 あるALS(筋萎縮性側索硬化症:きん・いしゅくせい・そくさく・こうかしょう)の方が、「声は自分のものだが、けっして自分ひとりのものではない」とおっしゃいました。わたしはこの言葉を聞いて、ALS患者が言葉を喪失するときの思いは、失語症者に似ているんだと感じました。 ALSは全身の運動ニューロン(神経)が、だんだん衰えていく病気です。手足と共に、のどの筋肉も衰えていくので、病気が進行すると声が出せなくなるのです。声を「けっして自分ひとりのものではない」と言った方は、声を失うと、声でつながる人と人のネットワークも失われてしまうと言っているのです。この方にとって「声」は、多くの人と結びつくためのネットワークの要(かなめ)でした。だから「けっして自分ひとりのものではない」のです。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2023年1月11日  招待有り責任著者
    2022年9月に永岡桂子文部科学大臣が語気を強めて(と、わたしは感じてしまいました)国際連合(以下、国連)の勧告は受け入れないと述べている姿がテレビに映りました。国連から日本政府に対して出た勧告に対する日本政府の対応のことです。現状の障害児への特別支援教育は「障害児の分離政策」につながるから止めるようにと勧告したことに対する返答でした。 それに加えて文部科学省が2022年4月、全国の教育委員会に出した通知も問題視されていました。文部科学省は特別支援学級に在籍する子どもが通常の学級で学ぶ時間を週の半分以内にとどめるようにと通知しています。国連は、この通知の撤回も要請していました。自治体によっては、ほとんどの時間を通常学級で過ごす実態があり、国の考えではそのような自治体の態度を許していると特別支援教育に差し障りがあるというのです。インクルーシブ教育のためには通常学級で過ごす方が実質的に有効のような気もするのですが、国の見解は異なっていました。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年12月19日  招待有り責任著者
    ■フィリピンの先住民アエタについて 吉田舞さんの『先住民の労働社会学―フィリピン市場社会の底辺を生きる』(吉田, 2018)という本を読んでいます。この連載の執筆のために読んだというわけではありません。狩猟採集民と都市環境の関係という、どちらかというと民族学に根差した興味から読んだのです。 この本を読んでいると、わたしにとっては、今さらながらですが、都市の経済社会に取り込まれた先住民の困難さと障害者の困難さには似たところが多いと気がつきます。「今さらながら」と書いたのは、ずっと以前から<障害者>の社会的立場は、さまざまな少数民族と似ている気がしていたからです。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2022年12月9日  招待有り責任著者
    断然遅れているのは「教育、学習支援業」で、1 .7 5 % です。これは幼稚園から大学まで、図書館や美術館、博物館も含む数字です。幼稚園から大学までは、当然「除外率制度」を加味しています。2 位以下には順に「情報通信業」(1 .8 0 % ) 、「不動産業、物品貸借業」( 1 .8 6 % ) 、「建設業」( 1 .9 7 % ) 、「学術研究、専門・技術サービス業」( 2 .0 8 % ) の業種が挙がっていました。「学術研究、専門・技術サービス業」の業種でよく聞く名前では、国立天文台とか森林総合研究所、国立感染症研究所が挙がっています。芸術家や通訳、コピーライターもここに含まれます。
  • 渡邊邦夫, 三谷雅純
    44-54 2022年12月  責任著者
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年11月24日  招待有り責任著者
    今、新自由主義を奉ずる人の間では、どうやって経済的、かつ効率的に面倒をみればよいのか、という議論が主流です。例えば、高齢者医療はどうすれば納税者の負担が軽くて済むかという議論や、障害者が地域の他の住民、つまりわたしの言い方では非障害者と同じ地域で住み続けるために、どのような支援が必要かという議論です。 基本的に高齢者と障害者は、幼児や病人などと共に、社会にはコストが掛かるので「(健常者は? 納税者は?)覚悟を決める必要がある」と言っているように聞こえます。そこには「<障害者>ゆえの感性を生産性に、あるいは人生に活かす」という視点はなく、<障害者>という存在は、ただ一方的に「(非障害者から)援助を受けるだけの存在」に過ぎないのです。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2022年11月10日  招待有り責任著者
    日本学術会議の公開シンポジウム「生命科学分野におけるジェンダー・ダイバーシティ」の3回目に「Disability Inclusive Academia:障害のある人々の視点は科学をどう変えるか」[https://www.scj.go.jp/ja/event/2022/320-s-0323.html]が2022年3月23日に開かれています。この公開シンポジウムのことです。このシンポジウムの全体は、今でも動画でも公開されています。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年10月19日  招待有り責任著者
    2009年、日常から解放されたインドネシアでの調査を終えて日本に帰ると、大学から厳重に封をした封筒が届きました。何だろうと開けると、わたしは「退職勧告者候補」であるという書類でした。動悸が速まります。 この連載の第8回「もうひとつの生き方―前哨戦」には、 脳塞栓症におちいる以前は仲の良かった同僚が、研究室を代表して、わたしに「最後通告」を告げに来ました。 「君はもう研究はできない。」「これからできることは、脳梗塞の患者として、医学者の研究に( 自分の身体を使って) 素材を提供することだ。」 とあります。そして 職場に残りたいのなら、(障害がどうのと)あれこれ言わずに<健常者>のように働くべきだ。(それができないなら辞職するべきだ) と言われたと書きました。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2022年10月12日  招待有り責任著者
    ヒューライツ大阪という組織が発行している「国際人権ひろば」という雑誌があります。主要な記事はウェブでも配信されています。その2021年11月号に、上智大学で文化心理学を教える出口真紀子さんが「マジョリティ側が陥りやすい『多様性』の罠」という文章を発表しています。 出口さんは「マイノリティへの差別が人権侵害の問題であるとか、マイノリティが経験する差別は制度・構造・歴史に基づいたものであるといった視点が限りなく少ない」と書いています。また「差別の問題を『情緒』や『気持ち』の問題として捉えることしかできない薄っぺらな想像力は、日本社会全体の問題であろう」ともお書きです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年9月20日  責任著者
    お世話になっている宿のラウト・ビル(青い海)の奥さんは、わたし達が一日の調査を終えてシャワーを浴び、寛(くつろ)いでいると、甘く冷たい飲み物を持ってきてくれます。わたし達は「お汁粉」と呼んでいました。ニコニコしながら持ってきてくれるので、心が温かくなります。断食月といっても日没以後はものを食べてもよいのです。飲み物の名前は忘れてしまいましたが、中に小さなタピオカ(キャッサバ芋のでんぷんを練ったもの)が入っていて、疲れた身体に甘さが染み渡る気がしました。日本ではタピオカ・ドリンクと呼んでいますが、それをもっと甘くした感じです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年8月19日  招待有り責任著者
    読者の皆さんは、2004年12月のスマトラ島北部の海底で起きた地震のことを聞いたことがあるでしょうか。マグニチュード9を越える巨大な地震で、大きな津波を引き起こしました。それ以来、スマトラ島とジャワ島の沖合では、毎年のように大きな海底地震が起こっています。 わたしや渡邊さんがスマトラ島にいた2007年9月12日にも地震がありました。我われが泊まっていたホテルは、ゆっくりと長い間揺れていました。その翌日も朝から地震があり、渡邊さんは日本で待つわたしの妻に、こちらは無事だと電話で知らせてくれました。 そのような海底地震が2006年7月17日にもジャワ島南西部沖で起こっています。そのとき、パンガンダランは津波に呑み込まれました。 その津波の影響が樹木や霊長類にも及んでいるはずです。そのようすを調査することは、津波のなかった年に調査をしていた者の義務かもしれない。これが渡邊さんの意見でした。もっともです。わたしのフィールド・ワークの再スタートです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年7月15日  招待有り責任著者
    渡邊さんは、リザルディさんやサンティさんという若いインドネシア人研究者といっしょに、スマトラ島という巨大な島(日本列島と同じくらいの巨大さ)で、そこにいる哺乳類がどんなところに棲んでいるかを調査していました。 インドネシアにも整備されはじめたGISの技術が使かえるかもしれない。これなら座ってできるので、三谷は障害と関係なく研究に貢献できる。渡邊さんはそう考えたのです。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2022年7月3日  招待有り責任著者
    ここまで書いてみて、わたしは奇妙なことに気がつきました。 「障害のある子どもたちの考えていること」というわたしの研修では、障害のある子どものために教員が熱心に聞いてくれている。しかし、教員仲間に障害者は増えないという事実がある(「教育委員会における障害者雇用に関する実態調査」)。これは一体、なぜなのだろう。わたしにとって「障害のある子どもたちのために研修を受ける」という行為と「障害者を教員仲間に迎える」という行為は、心情的にはとても近いと思い込んでいたのです。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより 10 1-1 2022年7月  招待有り責任著者
    はじめは「死生学」という言葉に馴染みがありませんでした。哲学の一種だろうか。それとも倫理学? まさか医学ではあるまい。そう感じて、わたしは放送大学で出している『死生学のフィールド』(NHK 出版)という本を読んでみました。すると、宗教と命の選別、高齢者のフレイルや臨床倫理、尊厳死など、今日的な話題が多く見つかりました。 その話題と繋がって、わたしの感性にぴったりきたのが医療人類学でした。わたしはアフリカの森でサルを調べる内に、ピグミーと呼ばれる狩猟採集民と仲良くなりました。そこでできた友人に会うために森には何度も通いましたが、自分で医療人類学の調査に行ったことはありませんでした。しかし、そこでは誰かしらが病気になり、誰かしらが死に、誰かしらが生まれています。アフリカの日常の風景です。そのような経験から、わたしは知らず知らずのうちに医療人類学的なものに馴染んでいったのです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年6月20日  招待有り責任著者
    ■板書の重要性 生徒の前で先生は黒板を使って授業を進めます。授業の中心は、今でも板書なのだと思います。わたしはマヒのために板書ができないので、講義や講演ではコンピュータとスライドを常用していますが、これだと学生や参加者の集中度が落ちてしまうような気がしています。
  • 三谷雅純
    朝日新聞社ウエブ・マガジン「論座 RONZA」 2022年5月29日  招待有り責任著者
    わたしは2002年4月23日に生まれ変わりました。 突然、脳塞栓(そくせん)症という病気になって死にかけたのです。脳塞栓症とは脳の血管に血栓が詰まって起こる脳梗塞(こうそく)の一種です。死のまぎわを、あちらに行こうか、それともこちらに戻ろうかとうろうろし、ついには戻ってきたのです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年5月17日  招待有り責任著者
    わたしと霊長類学との出会いは、かつて教科書で読んだ、伊谷純一郎さんが書かれた高崎山のサルの話でした。初めて読んだときにはそれほど驚いたという記憶はなく、ただおもしろいことを調べている先生がいるものだと思っただけでした。しかし、どこか印象に残る研究で、時間が経ってもしっかりと記憶に残っていました。そして京都大学に入学して実際に伊谷純一郎さんにお会いしてみると、その研究のすごさが身に染みて分かりました。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年4月20日  招待有り責任著者
    ■注文は「高校生が読んでわかる文章」 毎日新聞社の記者からメールをいただきました。 読んでみると、連載をお願いしたいというのです。ついては、わたしの都合に合わせるので、お目にかかりたいということでした。 最初はびっくりしました。以前にもアフリカの調査記を頼まれて、今は休刊になっている『科学朝日』や『アニマ』という雑誌に連載を持ったことがありました。ですから原稿を書くこと自体に問題はありません。題材はいくらでも湧いて出て来ます。しかし、脳塞栓症になってからのわたしの頭は以前とは違います。霧がかかったままです。はたして連載を頼んできた記者は、わたしの後遺症のことを知っているのだろうか。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより 9 1-1 2022年4月  招待有り責任著者
    ロシアがウクライナに侵攻しました。わたしは、まさか21世紀になって大国が独立国を侵すことなどあるまいと思っていました。ですから、連日のニュースを息を詰めて見つめています。 ニュースでは西隣の国に避難する若いお母さんと子どもの映像がよく流れます。お父さんは抵抗するために故郷に残ったのです。その避難のようすを見つめていたわたしの妻が言いました。「避難民の中には車いすの人がいない」
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年3月14日  招待有り責任著者
    ■夢のない夜 第9回「もうひとつの生き方――妻のこと」の原稿を「かんかん!」編集部に出し終えてから思い出したことがありました。それは脳塞栓(そくせん)症になって2、3年は、夜、夢を見なかったことです。 (中略) 第9回では、わたしの表情のない顔の写真を見てもらいました。パーキンソン病の人は身体の筋肉だけでなく、顔の表情筋もこわばって動かなくなるそうです。パーキンソン病の人のような表情を「仮面様顔貌(かめん・よう・がんぼう)」と呼ぶそうです。写真に写ったわたしの顔も表情筋が動かなくなっているようです。まるで仮面のようです。Webで調べてみると、レビー小体型認知症の人やうつの人にも、この表情が見られるそうです。何か脳のメカニズムに共通のものがあるのでしょうか。 わたしがこの表情をしていた頃は、確実に夢を見なくなっていました。いや、本当は夢を見ていたのかもしれませんが、目が覚めたときにはきれいに忘れていました。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年2月17日  招待有り責任著者
    ■怒るわたし、沈黙する家族 これは、わたしにとって書くのがつらい原稿になりました。 わたしが書いた下書きを読んで(投稿する前には、いつも読んでもらっています)、現実はこんなに穏やかではなかったと妻は言います。怒ったようです。いらだっています。下書きの原稿はボツにしました。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより (8) 2-2 2022年1月18日  招待有り責任著者
    認知症者や双極性障害者、うつの人、統合失調症者、それに高齢者や視覚障害者、聴覚障害者もみんな、それぞれの宇宙を持っています。しかし、当事者以外はその存在を知りません。そんな宇宙の姿が誰の目にも明らかになる方法があります。障害者芸術とかフランス語でアール・ブリュット(art brut: 技巧のない芸術)と呼ばれる芸術を鑑賞してみるのです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2022年1月13日  招待有り責任著者
    それにしても研究者の住む世界とは残酷なものです。わたしは人類学の一種である霊長類学の指導を河合雅雄さんから受けましたが、河合さんは子どもの頃、小児結核で片肺を失っています。治療のための薬が強すぎたからです。その河合さんはわたしが脳塞栓(そくせん)症に陥ったとき、 「きっと快癒(かいゆ)する.その確信が大切です.」 「世間は弱者に冷たい.冷酷でさえある.でも負けないように.負ければ見捨てられるだけです.誰も助けてくれない.生きるということは、確信に達する力を持つことです.」
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2021年12月14日  責任著者
    ■地名を忘れてしまう 脂汗を垂らし、苦労して思い出しても、手がかりをつくっておかないとすぐに忘れてしまうものがあります。第6回で書いた、店の名前や仕事の上で付き合いのある人の名前もそうですが、地名も「すぐに忘れてしまう」のです。本当のことを言えば、これは今でもそうです。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2021年11月15日  招待有り責任著者
    マンションの配置や通りの走り方はどうにか思い出せました。しかし、町の中の商店の名前が思い出せません。店が書店であるか、お好み焼き屋であるか、文房具店であるかは、じっくり考えていれば思い出せます。以前、訪れたときの様子も思い出せます。でも店名は思い出せません。無理をして思い出そうとすると、呼吸が乱れてくるような気がします。脳が酸素を必要としているのかもしれません。大きく息を吸って、吐いて…… ……やはり店名は思い出せませんでした。
  • 三谷雅純
    霊長類研究 2021年11月2日  査読有り責任著者
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2021年10月20日  招待有り責任著者
    リハビリ病院への転院は、わたしが命の危機を脱したことを意味します。治療のステージは一歩先に進んだのです。そんなとき、家にいる妻と二人の子どもたちはどんな思いだったのでしょう。命の危機を脱したのだから、安心していたのでしょうか。それとも、また別の心配ごとが押し寄せていたのでしょうか。 急性期に入院したとき(第3回 リハビリ前奏曲)と同じように、ここからは妻に聞いた話をもとに書きます。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより (7) 2-2 2021年10月  招待有り責任著者
    樋口直美さんの『誤作動する脳』(医学書院)はレビー小体型認知症について書いてあります。レビー小体型認知症は認知症の中でもアルツハイマー型認知症に次いで多いそうで、樋口さんご自身がその当事者です。幻視や睡眠障害、手足のふるえなどがおもな症状だそうですが、樋口さんにはこれ以外に、過去や未来の時間軸が認識できなくなるとおっしゃいます。何のことか意味がよく分からないという方がいると思います。樋口さんの文章を引用してみます。
  • 三谷雅純
    医学書院 web マガジン「かんかん!」 2021年9月17日  招待有り責任著者
    その女性は両足が自由に動かせないようでした。若い女性患者が平行棒を伝って歩く練習をしていたのです。その様子を見てわたしは、声を上げて笑ったのです。自分で自分にびっくりしてしまいました。自分の中の理性が、何という態度を取るんだと責めています。しかし、笑いが収まる気配はありません。
  • 三谷雅純
    医学書院webマガジン「かんかん!」 2021年8月11日  招待有り責任著者
    「あなたの名前は?」 「わたしは誰?」 「子どもたちの名前は?」 これは面会に訪れた妻が、わたしに聞いた最初の質問です。一瞬、奇妙な質問だと感じましたが、素直に答えました。わたしはきっと、しっかりした意識があるのかどうかを疑わせるほど、ぼんやりとした表情をしていたのだと思います。 わたしが「ミタニ マサズミ」「サキコ」……と、詰まりながらもゆっくりと、それでも順番通りに答えていくと、答え終わったときに、妻は心底ほっとした表情を浮かべました。医師からは「答えられないかもしれない」とでも告げられていたのでしょうか。
  • 三谷雅純
    医学書院webマガジン「かんかん!」 2021年7月19日  招待有り責任著者
    わたしは夢を見ていました。それは夢だと気が付かないほどリアルな夢でした。 わたしは水の中を漂っています。このまま底まで沈んでしまうのか、それとも下流へ流されてしまうのかは分かりません。何も不安は感じず、ただ水の流れに身を任せていたのです。水中では息ができないはずなのに、ちっとも苦しくありません。それとも、わたしは何か勘違いをしていただけで、そこは水中でなどないのでしょうか。
  • 三谷雅純
    医学書院webマガジン「かんかん!」 2021年6月30日  招待有り責任著者
    「聴覚失認」を経験する機会は突然訪れました。 ある夕食会での出来事です。その日は高次脳機能障害者を世話する人のために懇親会がありました。高次脳機能障害の当事者も出席していましたが、当事者よりも、普段お世話している方や病院関係者が目立つ夕食会でした。テーブルに付き、向かい合った人とおしゃべりを楽しみ、ゆっくり夕食をとろう。そして親交を深めよう。そういう主旨の夕食会でした。
  • 三谷雅純
    講談社ホームページ・ブルーバックス 2021年6月10日  招待有り責任著者
    ニホンザルがイモを食べる際、海水で洗ってきれいにしながら、同時に塩味をつけて食事を堪能している。しかもその行動は、学習を通じて他のサルにも伝わっていく──サルの世界にも文化的な行動があることを見出し、霊長類学の最前線で活躍した京都大学名誉教授・河合雅雄さんが先月、逝去されました。 サル学の泰斗の間近で、ともにフィールドワークをはじめとする研究に従事してきた兵庫県立大学 自然・環境科学研究所の客員教授・三谷雅純さんに追悼文をご寄稿いただきました。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより 6 2 2021年6月  招待有り責任著者
  • 三谷雅純
    2020年度 ECOMO 財団バリアフリー研究 成果報告 2021年3月  責任著者
    聴覚失認者に視聴覚実験を受けてもらうと、正解率は言語音以外ではテストの前半では低くいが、後半では向上した。しかし、言語音を使うと、前半は正解率が高かったが後半に正解率は低下した。それなら、チャイムを添えない設問に対してはどういう反応を示すだろうか。そのことを確かめるために、あえてチャイムをない言語音とチャイムをない「視覚刺激と一桁の暗算」の視聴覚実験を行った。実験には聴覚失認者(以下、障害者)のべ65名と、自分では障害の自覚がない非障害者のべ35名、合計のべ100名が参加した。実験の結果、言語音を使い設問ごとにまとめた場合、チャイムの有無で非障害者と中・重度障害者に有意な差が認められた。被験者を基準にまとめた場合はチャイムの有無では有意差がなかった。言語音課題でも、視覚刺激と暗算による課題でも、チャイムが無ければ、およそ軽度障害者と中・重度障害者の25 %しか理解できないが、チャイムがあれば軽度障害者の50 %以上、中・重度障害者の25 %以上が理解した。チャイムの添付によって、より多くの聴覚失認者が災害放送の言語的意味を理解できることが実証できた。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより 5 2 2021年3月  招待有り責任著者
  • 三谷雅純
    第13回ECOMO交通バリアフリー研究・活動助成報告会配付資料 13 25-44 2021年2月  招待有り責任著者
    緊急災害情報は、注意喚起のためのチャイムに続いて言語音で読み上げる災害情報を受け取ることで成り立つ。その時、言語音の理解が困難な聴覚失認者は災害情報を把握できるのだろうか。この疑問に答えるために、聴覚失認のある障害者のべ74名、非障害者のべ42名に対してマルチメディアDAISY形式で作成した言語音課題に答えてもらう視聴覚実験を行った。結果は被験者が言語音の理解が困難であるにも関わらず実験前半は正しい回答が得られた。しかし後半は間違いが目立った。今回の実験の結果から、多感覚統合を活用すれば聴覚失認者は通常の言語音でも情報を把握することができるが、時間の経過と共に言語音の把握は難しくなることが分かった。
  • 三谷雅純
    フォーラムだより 4 2-2 2020年11月  招待有り責任著者
  • 三谷雅純
    フォーラムだより (3) 2-2 2020年7月  招待有り筆頭著者
  • 三谷雅純
    フォーラムだより (2) 2-2 2020年4月  招待有り筆頭著者
  • 三谷雅純
    2019年度ECOMO 交通バリアフリー研究・活動助成完了報告書 2020年2月  招待有り筆頭著者
    緊急災害情報は、通常、注意喚起のためのチャイムに続いて、言語音で読み上げる災害情報を受け取ることで成り立つ。その時、チャイムの把握とともに言語音で伝えられる災害情報を理解することが求められる。しかし、特に言語音の把握が苦手な聴覚失認者は災害情報を理解できるのだろうか。この疑問に答えるために、聴覚失認のある障害者のべ74名、非障害者のべ42名とともに、マルチメディアDAISY形式で作成した言語音課題に答えてもらう視聴覚実験を行った。結果は被験者が聴覚失認者であるにも関わらず、実験前半は正しい回答が得られたが、後半は間違いが目立った。これは言語音を用いない視聴覚実験の、最初は間違いが目立ったが、やがて正解が多くなるという結果とは正反対のものであった。聴覚失認者は多感覚統合を活用すれば、通常の言語音でも情報を把握することができる。ただしチャイムによる注意喚起力に差はあるのか、チャイムの注意喚起力は言語音が聴覚失認者に及ぼす影響に比べて小さなものなのかという疑問が浮かぶ。この検討は今後の課題である。
  • 三谷 雅純
    フォーラムだより (1) 3 2019年12月  招待有り
    京都大学の霊長類研究所は岐阜県との県境に近い愛知県犬山市にある。京都大学の施設なのに京都市ではない。海外で霊長類研究所を説明するのに、京都大学の施設だとわかってもらえなくて困った経験がある。<br /> わたしがはじめて犬山を訪れたのは、霊長類研究所の大学院生になった時だった。木曽川の鵜飼とからくり人形で有名な犬山祭り、それに霊長類専門の動物園・日本モンキーセンターを目玉にした観光の町であった。日本モンキーセンターは、当時、名鉄観光が経営する施設だった。京都大学の施設ではなかったのだが、その後、名鉄観光は経営から手を引き、霊長類研究所が引き継いだという経緯がある。霊長類研究所ができるまでは研究者もモンキーセンターの学芸員としてアフリカの調査に出向いていた。河合さんのアフリカ調査も、モンキーセンターの類人猿学術調査隊から始まっている。<br />

書籍等出版物

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  • 三谷雅純 (担当:分担執筆, 範囲:244-248)
    神戸新聞総合出版センター 2023年3月31日 (ISBN: 4343011895)
  • 渡邊邦夫, 三谷雅純 (担当:分担執筆)
    自然環境研究センター 2022年12月
    要 旨 ニホンザルは有史以来、人とは離れた距離をもって暮らしていたと思われる。捕獲圧もあったが、人里周辺が疎林化し草原化するにしたがって、よりその度合いは強くなったと思われる。オオカミや飼い犬の存在も大きかった。こうした構図が激変したのは、戦後の燃料革命による。それを機に人里近くにまでニホンザルが現れるようになり、分布域は拡大し、個体数が増加し、被害は増え続けている。だがこうした認識が一般化したのは、ようやく21世紀が始まった頃である。戦後すぐの時期にはニホンザル保護の必要性ばかりが叫ばれていたが、現在は科学的な個体群管理の重要性が明らかになってきている。 ニホンザルは大きな群れをつくって日中活動する樹上性の哺乳類である(河合1964)。ヒトと同じ霊長類であり、人間が作る作物はほとんど全てが彼らの食物ともなる(辻ほか2018)。ニホンザルの保護管理をめぐる問題は全て、彼らのこの生活様式に由来する。ニホンザルを含む霊長類は、そもそも樹上生活に適応した分類群であり、森林を離れて生活している種・個体群は(ヒトを除けば)例外的な存在でしかない。そしてヨーロッパや北東アジアの中緯度地方では、後氷期に入るとほとんどの地域で早々に姿を消してしまった(高井2005;Li Baoguo et al.2020)。下北半島が現存する霊長類北限の地であるのは、日本近海を流れる暖流の影響もあり、彼らの生存を支える落葉広葉樹林が存在したからである。サルが棲む土地では、当然ながら人間との軋轢が大きかった。ヒマラヤ高地などの寒冷地でも、彼らは生き延びているし、中国の古文献をみても、かなり遅く明・清の時代までは、中国大陸中・南部のはるかに広い地域に多数の種が残存していた。人間が主として生活する低地・平坦地を中心としながらも、徐々に進んだ人間による開発の波とのせめぎ合いが現在の霊長類の分布を決定したと言って過言ではない。本稿では、有史以来ニホンザルがたどってきた途を人間活動との関係で見直しながら、現在がどのようなステージにあるのか、今後どのようなことが起こり得るのかを考察してみたい。
  • 三谷雅純
    春風社 2021年2月 (ISBN: 9784861107030)
  • 三谷雅純, 新宿区立図書館, 釧路市点字図書館
    毎日新聞社出版局 2013年
  • 村田, 浩一, 楠田, 哲士, 三谷, 雅純, その他 (担当:編訳, 範囲:題14章 研究) (原著:Array, Array, Array)
    文永堂出版 2011年8月 (ISBN: 9784830032349)  Refereed

講演・口頭発表等

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  • 三谷雅純
    地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)申請へ向けての勉強会 2024年7月17日 河村宏  招待有り
    エクアドルにおいて、リスク管理にせよ教育にせよ、防災をいかに迅速に行うかという点に主眼が置かれているように感じます。それにICTが役立つという方針で立案されているようです。事実、キトに近いコトパクシ山にせよ、その他の火山にせよ、活動が活発になっているのかもしれません。また豪雨災害や地震、津波などの自然災害も多く発生しているようです。しかし、わたしは基本的に人類学の研究者ですから、直接、災害に関わるには無理があります。ここでは「情報が発信された先の人びとの受け止め方」という点にしぼって、わたしが懸念を持っていることを紹介します。具体的には、わたしのアフリカでの経験を説明します。当然ですがエクアドルには多くの民族が住んでいます。中には現代文明から隔絶した生活を送る民族もいるのではないでしょうか。わたしは、現在、医療人類学の研究をしていますが、医療人類学とは、言ってみれば「患者」「障害者」「難病者」という「現代に現れた異民族」の立場に立って医療を見直し、彼らの人権を主張することに主眼があります。そうすることで医療者に見過ごされがちだった「患者」「障害者」「難病者」の言葉にならない本音を、多数者の言葉に翻訳することで貢献できると考えているからです。一見、わたしのアフリカでの経験はエクアドル・プロジェクトとは関係が無いように聞こえるかもしれませんが、皆さんが見過ごしがちなことも含まれているのかもしれません。
  • 三谷雅純
    青少年育成事業団+大阪府青少年活動財団+アサヒキャンプ合同_キャンプ・リーダー勉強会 2023年11月5日  招待有り
  • 三谷雅純
    青少年育成事業団+大阪府青少年活動財団+アサヒキャンプ合同_キャンプ・リーダー勉強会 2022年2月23日  招待有り
  • 三谷雅純
    カンテレ通信 2022年1月16日 関西テレビ放送株式会社  招待有り
    テレビ局は大地震や豪雨などの大きな災害の発生時には、どこにどんな被害があり、今後どこに危険が迫っているのかを、多くの人に素早くお伝えする役割を担っています。今回のゲストである兵庫県立大学の三谷雅純客員教授が研究してきたのは、聴覚失認者などへの情報伝達についてです。聴覚失認者とは、耳が聞こえないのではなく、音声としては聞こえているけれども、意味として理解することに困難がある方のことです。テレビがどのような工夫をすることで、より多くの人にわかりやすく正確に情報を届けられるのかについて考えます。
  • 三谷雅純
    ワークショップ: 聴覚失認者に 理解しやすい放送⽅法 2021年11月24日 三谷雅純

共同研究・競争的資金等の研究課題

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その他

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