金指,有里佳
和洋女子大学紀要 67 78-89 2026年3月31日 査読有り筆頭著者
本研究では、隣接する2つの大学およびその地域を対象に活動している市民活動団体が連携し、建物保存に向けてまちづくり活動を行ってきたプロセスに焦点を当て、大学と地域との関わりにおける課題等を明らかにすることを目的とした。本研究のまちづくり活動とは、これら2大学が所在する地域に明治時代に建てられたと推定される赤レンガ建造物が静かに残存していることから、その保存・活用を求める市民活動団体と大学が協働で行ってきた活動を指す。2022年からの3年間、市民活動団体と2大学という体制で建物保存に向けて活動した成果、課題について考察を行った。国府台地域は元々旧陸軍用地であり、当時建設された赤レンガ建造物は武器庫として使用されていたと記録されている。戦後、その一帯は千葉県の血清研究所となったが、赤レンガ建造物は取り壊されずにワクチンの保管等に使用され、現在も残存している。市民活動団体Aは、この赤レンガ建造物が貴重なフランス積みで造られていること等に歴史的文化的な価値を見出し、2010年から保存と活用を目指した活動を行っている。2022年度からは2大学との協働による活動を展開し、合同勉強会、赤レンガ建造物に立ち入り実測等を行う現地調査、赤レンガ建造物に関して調査研究を行った結果等を発表するパネル展覧会、国府台のまちの歴史を物語るポイントを巡るフィールドワーク、赤レンガ建造物の活用に向けた市民のアイデアを把握するワークショップ等を実施してきた。その結果、市民活動団体と2大学という体制により、2大学の学生の地域における学びの機会が拡大したこと、三者の連携により活動を周知する手段が格段に増加したこと等の成果が明らかとなった。しかしながら、大学は今後も参加する学生数を一定に保つことができるとは限らない点、市民活動団体Aは高齢化が深刻である点、市民活動団体Aの若手構成員は社会人として多忙となり参加の機会が減少している点といった課題も確認された。今後は三者協働の目標として、赤レンガ建造物を活用したまちづくりを具体的に考案する。