長谷川 拓人
成蹊人文研究 34(34) 31-53 2026年3月 査読有り
本論文では、子どもの頃から家族のケアを担ってきた人の就職や仕事をめぐる語りを分析し、ヤングアダルトケアラー(young adult carer)は家の外で働くことをどう意味付けているかを考察した。 分析からは、ヤングアダルトケアラーが経験する三つの仕事のタイプが見出された。すなわち、アルバイトなどの「非常勤雇用に基づく仕事」、一般的な「就職」を指す「常勤雇用に基づく仕事」、さらには自身のケアラー経験に関する講演活動などを含む「ケア経験を活かした不定期な仕事」である。その上で、家の外での仕事は、ヤングアダルトケアラーに対して、自分のペースで生活を組み立てられる余地、家族とは切り離された居心地の良い空間での同僚との快適なコミュニケーション、ケアだけでなく社会との関わりを持っているという感覚などをもたらすことを指摘し、それを「仕事/ ケア/ 自由な時間の配分をめぐる裁量の獲得」と「家以外の場所・他者との繋がり」という言葉で示した。正規労働ができているかどうかという視点から、ヤングアダルトケアラーや若者ケアラーの離職や仕事の継続をめぐる困難を指摘してきた先行研究に対して、本論文は、ヤングアダルトケアラーたちのさまざまな働き方や、経済面に留まらない仕事の意味付けを提示した。