私は「火山噴火」と「火山噴出物」をつなぐことを目指し,研究を進めています.
火山噴火では地下のマグマが上昇・発泡し,時には爆発やマグマの破砕を伴いながら,多様な火山噴出物を形成します.しかし,噴火そのものを直接観測できる機会は限られているため,多くの場合,私たちは噴出した火山灰や軽石,溶岩から噴火現象を読み解く必要があります.
そこで私は,火山岩や軽石に記録された岩石組織や火山ガラスの特徴を解析することで,「どのような噴火が,どのような噴出物を形成したのか」を明らかにしようとしています.特に,火山ガラスや微小結晶の化学組成,形態,数密度に着目し,マグマの上昇・脱ガス・冷却過程を復元することを目指しています.
研究対象の一つとして特に力を入れているのが,黒曜岩(黒曜石)です.黒曜岩は,粘り気の大きいマグマ(珪長質マグマ)が噴火した際に形成される,大部分がガラスからなる岩石です.「黒曜岩がどのような噴火で形成されるのか」は,火山学において古くから議論されてきた興味深いテーマです.近年,珪長質マグマの噴火では,同一のマグマが爆発的噴火と溶岩噴火を同時に,あるいは両者を繰り返し行き来する「ハイブリッド噴火」が起こることが明らかになり,このハイブリッド噴火と黒曜岩の成因との関連が議論されるようになってきました.こうした噴火現象と黒曜岩の成因の関係を,岩石の分析からどこまで読み解けるか,が私の研究テーマの一つです.
近年は,放射光を用いた火山ガラスの構造解析に取り組み,Si L₂,₃-edge XAFS を利用した熱履歴・黒曜岩形成過程の解明を進めています.また,軽石や火砕流堆積物に記録された減圧・冷却履歴を読み解くことで,爆発的噴火における噴煙や火砕流形成過程の理解にも挑戦しています.
さらに,岩石の記載や化学組成を利用した石材の産地同定や,簡易的な地質遺産モニタリング手法の開発など,火山噴出物を対象とした応用研究にも取り組んでいます.